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後半戦の“ゲームチェンジャー”は誰だ? 荒木絵里香が総括するSVリーグ女子前半戦と、さらなる進化を遂げるクラブの条件
後半戦の“ゲームチェンジャー”は誰だ? 荒木絵里香が総括するSVリーグ女子前半戦と、さらなる進化を遂げるクラブの条件
インタビュー

後半戦の“ゲームチェンジャー”は誰だ? 荒木絵里香が総括するSVリーグ女子前半戦と、さらなる進化を遂げるクラブの条件

2026.01.29
women

 世界最高峰のリーグを目指して産声を上げたSVリーグ。その2025-26シーズン前半戦は、ファンの想像を超えるドラマチックな展開の連続となりました。
 勢いに乗る群馬グリーンウイングス、PFUブルーキャッツ石川かほく、KUROBEアクアフェアリーズといった昨年の中位・下位クラブの躍進は、なぜ起きたのか? 苦境に立たされている東レアローズ滋賀や岡山シーガルズ、アランマーレ山形の反撃の糸口はどこにあるのか? 日本代表として長年コートに立ち続けてきた荒木絵里香さんに、前半戦を振り返りつつ、勝負の後半戦に向けて「誰がゲームの流れを変えるのか」という新たな観戦ポイントを提案していただきました。これを読めば、後半戦のバレーボール観戦がもっと楽しくなること間違いなしです。

荒木絵里香(あらきえりか)

1984年8月3日、岡山県出身。2003年、下北沢成徳高から東レ入団。その後埼玉上尾、トヨタ車体所属。08-09年は伊でプレー。北京、ロンドン、リオ、東京の五輪4大会出場。14年長女出産。21年9月引退。現在はクインシーズ刈谷のチームコーディネーター。

「面白くなってきた」SVリーグ。層の厚さで独走するNEC川崎と、追随する実力派3クラブ

 SVリーグも折り返し、前半戦を振り返ると率直に「面白くなってきた」という印象です。
 要因としては、外国籍選手が増えて、移籍選手も増えた。その結果、昨シーズンまではなかなか勝ち星を挙げられなかったクラブが勝ち星を増やしているだけでなく、ゲームの質も上がった。リーグ全体としても面白い試合が増えた、という印象です。
 その中で首位を走るのがNECレッドロケッツ川崎。全体を見渡しても、選手層の厚さは群を抜いています。特に(シルビア・チネロ・)ヌワカロール選手が入ったことで、攻撃力がさらにプラスして高くなった。二枚替えで出るのが和田(由紀子)選手というもったいないくらいの状況で、本当に誰が出ても変わらない強さ、基盤がNEC川崎の強み。あえて言うならば佐藤淑乃選手の代わりはいない、という面もありますが、選手層の厚いクラブをうまくコントロールするのがセッターの中川(つかさ)選手。代表での経験を活かして、まだ若い選手なのにベテラン選手のような風格すら漂わせています。優勝争いの中心となるのは間違いないでしょう。

中川つかさ選手©SV.LEAGUE

 順位で追うのがSAGA久光スプリングスと大阪マーヴェラス、ヴィクトリーナ姫路の3クラブ。SAGA久光は例年上位にいるので勝ち方を知っている選手が多いだけでなく、栄(絵里香)選手がトスを上げることで安定したゲーム展開がつくれています。NEC川崎と同じく選手層が厚いので、スターターが固定せず、いろいろな選手が出てみんなが活躍する。人数自体は少ないですが、長いリーグ戦の戦い方としては理想的ではないでしょうか。

栄絵里香選手©SV.LEAGUE

 そして昨年の優勝クラブであり、昨年末の皇后杯を制した大阪MV。何と言ってもやはり最後を決める田中(瑞稀)選手の存在が大きいですね。高卒で入団後、10年以上活躍し続け、勝負強さやタイトルがかかった試合での勝ち方、いろいろな要素を持っていて、本当に大好きな選手ですが、対戦相手の時は何をやっても外されるし、ブロックも使われて決められるので、大嫌いでした(笑)。ネットを挟んで駆け引きし合うのが本当に楽しかった選手なので、ぜひ多くの方々に注目してほしいですね。

田中瑞稀選手©SV.LEAGUE

 姫路はトップリーグに上がってまだ数年ですが、選手層も厚くなり、試合ごとに誰がどんな形で出てくるか。とても面白い戦い方をしています。移籍加入した選手も多い中、今シーズンこの位置にいるのは福留慧美選手の存在が大きい。福留選手の加入がディフェンスのクオリティ、安定感をグッと引き上げた。以前は黙々と自分のプレーをします、という印象でしたがイタリアリーグを経験して、コミュニケーションや人を動かすことをより意識しているように見えます。クラブをうまく回すという意味でも福留選手の貢献度は大きく働いているのではないでしょうか。

福留慧美選手©SV.LEAGUE

前半戦の主役は群馬! “リアルハイキュー”髙相選手と個性が噛み合う躍進のクラブたち

 そして前半戦の主役と言っても過言ではないのが、群馬グリーンウイングスです。外国籍の3選手、全員が機能しているところに加えて盛り上げ隊長の仁井田(桃子)選手がライトにいる。加えて、坂本(将康)ヘッドコーチのバレーを理解して、体現できるセッターの山下遥香選手がいる。すべてのバランスがパチッとハマっています。キャプテンの髙相みな実選手は164センチとサイズの小さい選手ですが、まさにリアルハイキューとも言うべき人を惹きつける魅力があって、ホームゲームの集客もすごい。あの応援の熱がクラブを後押しして、とてもいい形で前に進んでいるクラブ、という印象です。

髙相みな実選手©SV.LEAGUE

 昨年以上の勝ち星、という面でいえばPFUブルーキャッツ石川かほく、KUROBEアクアフェアリーズもとてもいいバレーをしていて、群馬と同じく前半戦を盛り上げた主役と言えるクラブです。PFUは(バルデス)メリーサ選手の決定力が安定してきた。セッターの松井(珠巳)選手が攻撃陣をうまくコントロールしているし、タットダオ(・ヌクジャン)選手や川添(美優)選手、本当に上手い選手が揃っています。いいバレーをするだけでなく、対戦相手にとって嫌なバレーをするクラブなので上位クラブからも白星を挙げている。後半戦も楽しみですね。

バルデス・メリーサ選手©SV.LEAGUE

 KUROBEも外国籍選手がフィットしていることに加え、ミドルブロッカーの山口(真季)選手が素晴らしい。12月のAstemo リヴァーレ茨城戦ではブロック本数が11本、175センチと高さはないですがハードワークできる選手で、ボールがブロックに当たった時に下へ落ちる。形もきれいで、正しく手が出ているので「山口選手のブロックが嫌」と相手に印象付けているはずです。セッターの安田美南選手も179センチの高さを活かして、特に外国籍選手のヒットを活かしているので、クラブとしてもいいところが存分に発揮されている印象です。

山口真季選手©SV.LEAGUE

激戦のチャンピオンシップ進出争い。名セッター・ヌットサラ選手がもたらす変化と、底力ある強豪の意地

 チャンピオンシップ進出争いを繰り広げるのが、埼玉上尾メディックス、クインシーズ刈谷、デンソーエアリービーズ、Astemoリヴァーレ茨城。埼玉上尾は組織としてベースがあり、誰が出てもどの組み合わせでも強い。土日で出るメンバーが異なっていたり、クラブとしての引き出しや戦い方があるのでみんなフレッシュですし、後半戦はもっと良くなっていくのではないでしょうか。

埼玉上尾メディックス©SV.LEAGUE

 刈谷も勝敗数以上にクラブとしていい戦いができていて、雰囲気もいいので後半戦が楽しみなクラブです。外国籍選手に頼っている面は大きいですが、守備のよい鴫原(ひなた)選手を中心に日本人選手も成長しています。加えてヌットサラ(・トムコム)選手がトスを上げるようになって、クラブとしての引き出しも増えた。彼女とは私も代表クラブで何度も対戦しましたが、選手であるだけでなく今はコーチ兼任として若いセッターの指導もしてくれています。人間力もあって、本当に素晴らしい選手なのでぜひ注目してほしいですね。

ヌットサラ・トムコム選手©SV.LEAGUE

 昨季に比べるとやや苦戦が続くデンソー、一つの要因としてはサブリーナ(・デジェズス・マシャド)選手がまだフィットしきれていないため、ロザマリア(・モンチベレル)選手の負担が高くなっている印象があります。日本人選手も実績のある選手が揃っていますが、まだそれほど伸び切っていないのも少々もったいない。とはいえ、まだ前半戦を終えたばかりなのでここからクラブが一気に成長する可能性もありますし、ロザマリア選手のギアが上がれば一気に変わる。自力のあるクラブなのでここからが楽しみです。

ロザマリア・モンチベレル選手©SV.LEAGUE

 Astemoはヘッドコーチが代わりましたが、外国籍選手も昨季と変わらず、取り組んでいるバレーボール自体は大きく変化していません。ベテランのミドルブロッカー、渡邊(彩)選手も戻ってきて、いい選手はたくさん揃っているので、新戦力の台頭にも期待しています。

渡邊彩選手©SV.LEAGUE

苦しい戦いが続く名門の現在地。一つのきっかけがクラブを激変させる

 ここまでかなり苦しい戦いを強いられているのが東レアローズ滋賀。昨季はヌワカロール選手の得点力に頼りきっている状況から抜け出せず、田代(佳奈美)選手の組み立てに頼るしかなかった。今季は若い選手のプレー機会も増え、勢いがある時はいいけれど、なかなか苦しい状態が続いています。とはいえ、昨季もなかなか勝てずに苦しんだ群馬が連敗を抜けた後に勝ち始めたように、一つのきっかけからクラブが激変することもある。ベテランと若手が融合して、いい方向に進んでほしい。1人のOGとして願っています。

折立湖雪選手©SV.LEAGUE

 メンバーの変化という面で言えば、岡山シーガルズも金田修佳選手が引退したのが大きい。彼女は本当に上手い選手で、対戦するのが嫌でした。金田選手の抜けた穴だけでなく、これは私の印象ですが、私の現役時代に見て来た岡山らしさ。ハードプッシュや粘り強いラリーから、気づいたらミスをさせられる。そんないやらしさが少し薄れているように感じます。岡山ならではのしぶといスタイルで、ここからの巻き返しに期待したいですね。

岡山シーガルズ©SV.LEAGUE

 結果だけを見ればアランマーレ山形はかなり苦しい。確かに、戦力の面では上位クラブと差があるのは否めません。ですが組織としては素晴らしいし、クラブとして目指すものも明確。北原(勉)ヘッドコーチを中心にしたとてもいいクラブだな、といつも感じます。学生時代や他のクラブでは出場機会が得られなかった選手が躍動するのもA山形ならではの良さですし、何よりクラブがとても明るい。勢いを持って後半戦の台風の目になってほしいですね。

アランマーレ山形©SV.LEAGUE

誰が「ゲームチェンジャー」になるのか。後半戦、勝利を掴むための“勝ちパターン”とは

 後半戦に向けて、優勝争いやチャンピオンシップ進出争い。見どころはたくさんありますが、SVリーグになって試合数が増えたので、どの場面でどんな選手が投入されるか。2枚替えも各クラブが多用していますし、出場するメンバーのパターンもさまざまなので、誰がゲームチェンジャーになるのか、というのも1つの見どころです。私の経験も踏まえ、優勝するクラブというのはやはり後半戦、ラストに向けて状態が上がっていくので、ここから戦い方が定まっていく中でいかに勝ちパターンをつくれるか。コートに立つ選手はもちろんですが、アップゾーンの選手たちの気迫や、楽しそうに応援する姿もバレーボールならでは、SVリーグならではの楽しみです。いろいろな着目ポイントから、ぜひ、バレーボールを楽しんで下さい。

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