SVリーグ2年目の男子戦線は、数字上の順位以上に肉薄した、ハイレベルな攻防が繰り広げられています。「上位から下位まで、どこが勝ってもおかしくない」と語るのは、元日本代表主将の福澤達哉さん。
世界トップクラスのセッターがもたらした衝撃、ミドルブロッカーを軸に据えた最新戦術、そして40代にしてなお進化を続けるベテランの存在まで。オンザコートの外国籍選手枠が拡大し、個の力が拮抗し始めた今、リーグは「個の力」から「組織の完成度」を問う後半戦へと突入します。福澤さんが全10クラブの現状を鋭く分析し、勝負の明暗を分かつポイントを紐解きます。

福澤達哉(ふくざわ たつや)
1986年7月1日、京都府生まれ。中央大1年時に代表デビュー。'09年、パナソニックの内定選手としてV・プレミアリーグ新人賞を獲得。同年代表でもアジア選手権のMVPを受賞。'15年からは日本を離れ、ブラジル、フランスでもプレー。日本代表では'08年、北京五輪出場。21年に引退後、パナソニックグループで広報を務めている。
「数字以上の大混戦」外国籍選手の増加と若手の台頭がもたらした地殻変動
1位から10位まで、数字だけを見れば差があるように見えますが、中身を見るとそれほど大きな差はない。むしろ上位から下位までどのクラブを力につけてきて、どこが勝ってもおかしくない構図になっている印象です。
その要因は何か。オンザコートの外国籍選手の数が増えたことはもちろん大きい。試合の最終局面で勝ち切るためには、外国籍選手や日本代表選手など経験の差は出てきますが、なかなか勝ち星を得られなかったクラブにもいい若い選手がいたり、外国籍選手がうまく機能して力を示せるようになった。リーグ全体を見れば、来シーズンはさらに移籍も活発になってくるのではないか。そんな兆しが見えるのも、今シーズンの特徴でありプラスの要素ではないでしょうか。
盤石の首位・サントリーと、世界最高峰のセッターが変貌させた大阪B
では各クラブはどんな状況か。首位を走るサントリーサンバーズ大阪は、単純に戦力値がリーグで最も高い。試合によって多少の波はあっても、要所で踏ん張れる経験豊富な選手が揃っており、簡単には負けない強さを持っています。1敗で首位を走るというのもある意味順当と言えるクラブです。中心になるのは(ドミトリー・)ムセルスキー選手。絶対的なエースがいることに加え、近代バレーでかなり重要な役割を担うセッターとリベロに関田(誠大)選手、小川(智大)選手という柱がいること。昨シーズンの強さからさらにプラスしている要因は間違いなく彼ら2人の加入が大きい。一方で、ムセルスキー選手が欠場した天皇杯はヴォレアス北海道に敗れた。これも事実です。今季限りでの現役引退を表明しているムセルスキー選手の凄さは説明不要ですので、その圧倒的な存在を軸に、クラブとして終盤に向けてさらにどんな強みを増していくのか楽しみです。

世界クラブ選手権準優勝の大阪ブルテオン、私自身一番の注目ポイントはセッターが外国籍選手になり、どんなバレーになるのかということでしたが想像以上でしたね(笑)。(アントワーヌ・)ブリザール選手という世界トップレベルのセッターが来て、サーブやブロック、単発のプレーの凄さはもちろんですがトスワークも素晴らしい。毎試合驚きの連続で、見ていてワクワクするバレーを展開してくれています。加えて、サントリーと同様にセッターとリベロ、山本(智大)選手の安定感が素晴らしい。また、今季は富田(将馬)選手がかなり成長していて、守備面だけでなく攻撃面でもトスの速さが増し、決定力も上がった。西田(有志)新キャプテンのもと、後半戦どんなバレーをしていくのか、サントリーとはまたタイプが違うクラブなので要注目です。

「世界の潮流」を体現するWD名古屋と、抜群の爆発力を秘めるSTINGS愛知
現状の二強を追うのが、ウルフドッグス名古屋とジェイテクトSTINGS愛知。WD名古屋は昨季からセッターの深津(英臣)が加入した安定感もありつつ、今季はミドルに(ノルベルト・)フベル選手が加わった。これまではどうしても外国籍選手を獲得する際、オポジットやアウトサイドヒッターの“点取り屋”とされる選手が多かった中、ミドルを獲得して機能させている。世界のバレーに近い形を最も体現できているクラブと言えるのではないでしょうか。そこに宮浦(健人)選手が入って、速い攻撃も試行錯誤しながら磨いている。SVリーグだけでなく日本代表を見据えても大きなチャレンジをしている中に、勢いのある水町(泰杜)選手もいる。ヴァレリオ(・バルドヴィン)ヘッドコーチの起用法も非常にマッチしているので、後半戦の戦い方がどうなるか。見どころしかありません。

STINGS愛知も前半戦は(トリー・)デファルコ選手を中心に、非常にうまくクラブがまとまっていた。(ステファン・)ボワイエ選手ももともと高さのあるオポジットなので得点力がありますし、セッターの河東(祐大)選手もうまく使っている。何より、藤中(謙也)選手がいいですね。移籍して1年目のシーズンですが、守備力も高く、攻撃にも巧さがある。抜群のバランサーであり、リベロの高橋(和幸)選手と共に守備のいい選手が揃っているのも強み。不安定な面もありますが、爆発力もあるクラブなので、うまくハマればより強さを発揮するクラブだと思っています。

戦術の東京GB、育成の広島TH、巻き返しを期す東レ静岡。中位クラブの逆襲
昨季から力をつけてきた東京グレートベアーズ。比較的若い選手が多いクラブですが、オポジットの(バルトシュ・)クレク選手、ミドルに(ヤン・)コザメルニク選手、アウトサイドヒッターの(ルチアーノ・)ヴィセンティン選手、アレックス(・フェレイラ)選手と4人の外国籍選手がいます。外国籍選手のオンザコートが2名なので、起用法によって戦い方が変わりますが、ケガから復帰したヴィセンティン選手が非常にいいパフォーマンスを発揮しています。アウトサイドには後藤(陸翔)選手や柳田(将洋)選手、セッターにはベテランの深津(旭弘)選手がいて、デビューしたばかりの近藤(蘭丸)選手もいる。ミドルにも村山(豪)選手、伊藤(吏玖)選手とサイドアウト能力の高い選手が揃っているので、カスパー(・ヴオリネン)ヘッドコーチの時にトリッキーな起用法にも注目です。

全クラブの中で外国籍選手も含め、比較的若いクラブが広島サンダーズです。ポテンシャルは十分で、後半きっかけをつかめばグッと上がる可能性もあるけれど粗さもあるので読めない面もある。現状は負け数が先行していますが、(カルロス・ハビエル・)ウェベルヘッドコーチは育成も含めて指揮をしており、その期待に選手がどう応えられるか。誰に聞いても「いい指導者だ」と言われるウェベルヘッドコーチのもと、移籍してきた永露(元稀)選手や西本(圭吾)選手、昨季からクラブの軸になりつつある新井(雄大)選手がいる。このヘッドコーチのもとで成長したいという選手のモチベーションがどのタイミングで花開くか。非常に楽しみです。

前半戦、東レアローズ静岡はかなり苦しい戦いが続きました。ここに来て(テイラー・)エイブリル選手の出場機会が増えて、ようやく(キリル・)クレーツ選手も日本のリーグに馴染んできた。セッターの新(貴裕)選手はもともと真ん中を使えるセッターなので、クラブとしての形がつかめてきたように見えます。若くて活きのいい選手はいるので、組み合わせ次第で戦い方の引き出しも増えるはず。阿部(裕太)ヘッドコーチのクラブ戦術をどれだけ打ち出し、フィットできるかが後半戦のカギになるのではないでしょうか。

志高きヴォレアス、再起を狙う日鉄堺BZ、そして“鉄人”松本慶彦が象徴するVC長野の魅力
天皇杯準優勝のヴォレアス北海道、バレー界をもっとこうしていきたいという向上心、志の高いクラブでありその姿勢が選手にも浸透しているというのが私の印象です。クラブ創設時からエド(・クライン)ヘッドコーチが率いる中、勝利に貪欲な選手たちが揃う。言葉を選ばずに言うと、世界的に見れば外国籍選手も日本人選手も決して知名度は高くないが、サーブやブロック、スパイクで驚かせる三好(佳介)選手のような、ここからステップアップしていきそうなポテンシャルを秘めた選手が多くいる。サントリーからレンタル移籍の染野(輝)選手が天皇杯でサントリーに勝利するのも面白い。クラブの仕掛け方やホームゲーム、SVリーグの地域密着という面でも非常にいい事例をつくっているクラブです。

リーグ開幕以降、かなり苦戦を強いられた印象が強いのが、日本製鉄堺ブレイザーズです。年々バレーボールのトレンドが変化し、世界的な経験や知見を持った指導者もアップデートしていく中で、クラブには経験と実績をもつ選手も揃っているものの、なかなかクラブとしての方向性が定まらず、勝てる試合を勝ち切れないことが、現在の勝敗につながっている要因ではないでしょうか。(マシュー・)アンダーソン選手の出場機会は多くありませんが、(トンマーゾ・)リナルディ選手やウルリック(・ダール)選手といった攻撃力のある選手を、大宅(真樹)選手がどうやって軸をつくり噛み合わせていくか。戦力はあるクラブなのでもっともっと勝てるチャンスはあるはずです。

開幕連勝といいスタートダッシュを切ったVC長野トライデンツですが、中盤になって対策されるようになり少々苦しい戦いが続いています。とはいえセッターの中島(健斗)選手やアウトサイドの工藤(有史)選手をはじめ、スキルのある選手も揃っていて高いパフォーマンスを発揮する中に、大ベテランの松本(慶彦)選手もいる。中島選手と松本選手の相性も非常に良く、あれだけの決定率を残せているのも強みですし、松本さんがまだ出て、これだけ活躍しているというのは他にはない一つの強みでありエンタメ要素でもあります。若手の登竜門であると同時に、大ベテランも活躍する。それも大きな魅力であるはずです。

「クラブの完成度」が問われる後半戦。複雑な駆け引きがバレーをさらに面白くする
ここから一気に終盤へ。前半戦は個の力に注目が集まりがちですが、後半戦はクラブの完成度が高まっていく中で、各クラブがどういうカラーでバレーボールを展開していくのか、相手によってどう変化をするのかが見どころです。個人的にも非常に注目していますし、それを伝えるのが私のミッションでもあります。クラブとしての戦略的な駆け引きやベンチワーク、さらにコート上でのさまざまな駆け引きがいかに行われているのか。見ている方々にバレーボールの奥深さや面白さが伝わるように、分かりやすい発信をしていきたいですね。
