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SV.LEAGUE JOURNAL

「1回のハイタッチが忘れられないものになる」荒木絵里香が語る、子どもたちとつなぐバレーの未来
「1回のハイタッチが忘れられないものになる」荒木絵里香が語る、子どもたちとつなぐバレーの未来
インタビュー

「1回のハイタッチが忘れられないものになる」荒木絵里香が語る、子どもたちとつなぐバレーの未来

2026.03.30

26年1月末のエムット presents SV.LEAGUE ALL STAR GAMES 2025-26 KOBEで開催されたバレーボール教室。子どもたちの輝く瞳を「贅沢な空間」と表現する荒木絵里香さんは、自身も母となり、指導者の道を見据える中で、次世代への接し方に新たな変化を感じています。技術を教える以上に「できた!」という成功体験を大切にする彼女。選手たちと触れ合う刺激が、いかに子どもたちの選択肢を広げ、競技の裾野を広げていくのか。元日本代表主将が抱く、育成への熱い想いに迫ります。(取材日/1月31日)

――1月31日にGLION ARENA KOBEで開催されたオールスターゲームズ、荒木さんも出場選手と一緒にバレーボール教室に参加されましたが、子どもたち、楽しそうでしたね
荒木 最初は選手も子どもたちも緊張していたんですけど、とてもいい時間になりました。子どもたちのああいう目を見られる贅沢な空間で、私自身もそういう瞬間に立ち会えて嬉しかったです。選手たちもシーズン中にバレーボール教室などはなかなかできないので、彼女たちにとっても貴重だったと思うし、時間が足りないぐらいでした。

――「最初はお互い緊張していた」とおっしゃいましたが、子どもたちと接するからこそ意識したことや心がけたことはありましたか?
荒木 できるだけ選手との距離が近くなるように、ハイタッチの回数を増やしたりしていました。ほんのちょっと触れ合う機会があるだけでも子どもたちも心を開いてやりやすくなる。私も子どもを持って、育児をする中で娘はもちろん、娘のお友達と接する機会も多いので、自分の子どもがこういうことをしてもらえたら嬉しいな、と考えるようにもなりました。今はコーチの勉強もしているのと、バルシューレ(子ども向けのボール運動プログラム)で子どもたちとの触れ合い方もいろいろな角度から学ばせてもらっています。ただ教えるだけでなく「楽しい」「もっとやりたいな」と思ってもらえるような刺激を与えられれば嬉しいし、大事にしたいな、と思って接しています。

――トップ選手たちは子どもたちにとって憧れの存在でもある。バレー教室でも「和田選手のサーブを受けたい」という子たちがたくさんいました
素直でかわいいですよね(笑)。子どもたちにとっては1回のハイタッチが忘れられないハイタッチになるし、現役選手からしか受けられない絶大な刺激がありますから。今は選手たちもプロ選手としての行動、言葉がけをしていると思うし、意識も高まっているからこそ子どもたちと触れ合える機会をもっと増やしていきたいです。

――子どもたちの中でもバレーボール経験者もいれば、未経験の子もいる。対象によって接し方の変化はありますか?
初心者の子に向けてはとにかく「面白い」「楽しい」「もっとやりたい」と感じてほしいし、何より「できた!」という気持ちを味わってほしいな、って。そもそもバレーボールってすごく難しいじゃないですか。私もバレーボールを始めた頃は全然まっすぐ(ボールが)飛ばなかったから、できるようになった時は嬉しかったし、そういう小さな成功体験を見つけて言葉にして伝えてあげるだけでも、子どもたちはすごく嬉しそうなんです。だからポジティブな声かけをして、もっとやりたいな、という気持ちを引き出すことを意識しています。

――ポジティブな声かけ、大事ですね
子どものクラブの中には、高い目標を掲げて小中学生の成長期にもすごく厳しく練習するチームもありますが、私は必要以上にやることが正しいかと言えばそうではないと思っていて。もちろんそれぞれの目的に則っていると思うんですけど、いろんなバレーボールをして、その中から「自分はここを選ぶ」となってくれるのが理想的だと思っているので、SVリーグの選手や私たちが開催するバレーボール教室や、実際の試合を見に来た時は違う視点を持って、こんな考え方もある、こんな選手もいる、こんな視点もある、と1つの選択肢が増えるきっかけになったらいいですね。

――荒木さんご自身のことも改めて聞かせて下さい。子どもの頃はどんな習い事、スポーツをしていましたか?
水泳をずっとやっていて、陸上クラブにも入っていたので、泳いで、走って、跳んでいました。

――身長も高かったそうですね
小6で180センチです(笑)。父がラグビー選手だったので、ラグビーの試合もよく見に行きましたが、試合は見ずにグラウンドの横でドングリを拾っていました(笑)

――バレーボールのスタートは?
5年生で始めたんですけど、最初は強いクラブに入って、すぐやめた。練習だけでなくいろいろと厳しかったので、体育教師だった母が「やめなさい」と。それからは厳しさよりも楽しさを優先する クラブに入りました。自分が親になってみて改めて思いますが、できないなりに一生懸命頑張っている我が子に対して「やめなさい」とはなかなか言えない。すごいな、と思うし、あの時母が言ってくれたおかげで、その後もバレーボールを続けてきたと思うんです。子どもはまっさらなので、親もスポーツや身体の成長に対して正しい知識を持つことが必要だし、子供をどう導いてあげられるかが大人の役目。私自身ももっと正しい情報を発信していかなきゃ、と思います。

――娘さんにもバレーボールをやってほしい、と思うことはありましたか?
娘はバレーボールをやっていないし、特にやらせようとも思わないですね。1、2回キッズエスコートやバレーボール教室に参加したこともありましたけど、そこまで興味を持たなかった。でも何かに一生懸命になってほしいな、という気持ちはあって、今、娘はダンスに夢中になっているので、そこはサポートしたいなと思っています。

――いいですね。子どもたちが「楽しい」と感じれば一生懸命になるし、いろいろな輪も広がっていく
バレーボールの会場でもハーフタイムで子どもたちがダンスをしたりすることもあるじゃないですか。その機会を通して、普段はバレーボールを見たことがない、という家族も絶対見に来ますよね。そこで「面白い」と思ってもらえたらまた足を運んでくれるかもしれない。バレーボールの試合のクオリティ、迫力を味わってほしいというはもちろん大前提ですが、あそこへ行けばおいしいものが食べられる。選手とハイタッチができた。サインボールを投げてもらえた。何がきっかけになるかわからない。小さなことの1つ1つが次につながっていくと思うし、子どもたちに応援してもらえることは選手にとっても力になる。バレーボールって、誰もが一度はやったことがあるスポーツで、小さい子から年齢を重ねた方々まで、幅広い世代ができるなかなかない競技なので、いろいろな方に見てもらえるチャンスがある。ショッピングモールへ行く感覚で、バレーボールを見に行くことが週末のイベントになっていくように。より多くの方に足を運んでいただけると嬉しいし、そのためにもいろんな活動をしていきたいです。

――SVリーグになって試合の演出や魅せ方も変化した。楽しむところはたくさんあります
この時代にやりたかった、いいなぁ、っていつも思いますよ(笑)。GLION ARENA KOBEのような素敵な場所で試合ができるのもうらやましいし、試合の盛り上がりも違う。でもまだまだもっとよくなると思うので、試合プラスアルファの部分を高められるように。選手たちと一緒に盛り上げていきたいです。

――現役復帰もあるかも?
ないでしょ(笑)。結構長くやりましたよ(笑)。でも今は岩崎(こよみ)選手や田代(佳奈美)選手のように長く競技を続ける選手も増えました。競技を長く続けるということも1つの魅力だと思うし、宮部藍梨選手のようにアメリカの大学へ行ってからSVリーグに入った選手、一度引退して復帰した内瀬戸(真実)選手、澤田(由佳)選手、選手のバックグラウンドもさまざまなのでそこも注目していただきたいです。

――荒木さんは挑戦し続けるための習慣、乗り越えるための習慣はありましたか?
挑戦、と言うと苦しいことのように捉えられがちですけど、私は挑戦することをまず楽しむことが大事だと思っていたんです。チャレンジすること自体が、できないことをできるようにすることなので、楽しいことだと考えて取り組んできました。大きなチャレンジを達成するには毎日の小さな目標を達成することでしかたどりつけないと思っていたので、選手だけじゃなく、たとえば子どもたちだったら「今日は21時に寝る」「野菜を食べる」とか小さなことでいい。そういう小さな目標を1つ1つクリアしていく先で大きな目標がクリアできると私は思っています。

――SVリーグになって華やかさも増したのは確かですが、プロの世界である以上は結果も求められる。厳しい世界ではありますが、だからこそあえて見てほしい、注目してほしいところはありますか?
プロ選手である以上結果が求められる世界で、選手もきちんと学ぶ姿勢や、自分自身の取り組み方がしっかりしていないとやっていけないシビアな世界にこれからさらになっていく。バレーボールの技術だけでなく、教育がすごく大事な要素になると思うし、クラブやリーグもサポートできるシステムを整えて行かないといけない。繰り返すようですが、今の選手たちはそういう厳しい世界の中でもプロとしての意識が高い選手ばかりなので、選手個人、クラブ、リーグ、さまざまな発信を続けていきたいし、素敵な選手たちやクラブに注目してほしいです。

――最後に、これからを担う若い世代に向けて、荒木さんが伝えたい思いはありますか?
バレーボールは“つなぐ”スポーツで、ボールだけでなく人と人もつなぐ、魅力のあるとても面白いスポーツなので一生懸命取り組んで頑張ってもらいたいし、その魅力をよりたくさん伝えていけるのがSVリーグや日本代表、今のトップ選手たちです。みんなでその面白さをより伝えて、愛し、愛される競技であり続けてほしいので、私も選手たちや、これからを担い、背負う選手たちがいい環境でできるような競技環境をつくっていけるように頑張ります。

Text by Yuko Tanaka
Photograph by Yuta Nishida

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