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【SPIKE!賞受賞者インタビュー】ワンポイントから王座のキーマンへ。甲斐優斗、極限のファイナルで優勝を引き寄せた「ゲームチェンジャー」の素顔。
【SPIKE!賞受賞者インタビュー】ワンポイントから王座のキーマンへ。甲斐優斗、極限のファイナルで優勝を引き寄せた「ゲームチェンジャー」の素顔。
インタビュー

【SPIKE!賞受賞者インタビュー】ワンポイントから王座のキーマンへ。甲斐優斗、極限のファイナルで優勝を引き寄せた「ゲームチェンジャー」の素顔。

2026.05.31
bluteon

【SPIKE!賞とは】
本メディアが掲げる「誰もが誰かを応援したくなる、そのきっかけがここにある。」というコピーを形にすべく、2025-26 大同生命SV.LEAGUE CHAMPIONSHIP Finalsにて設定。
単なるスタッツの優劣だけではなく、コート上で誰よりも熱い姿を体現し、ファンの心を震わせた選手に贈られる。

5月17日、2025-26 大同生命SV.LEAGUE MENは大阪ブルテオンがSVリーグ初制覇(Vリーグ時代含めると7シーズンぶり7度目)で幕を閉じた。GAME3までもつれた熱戦のなか、ファンの心を最も熱く震わせた選手に贈られる「SPIKE!賞」。その受賞者に選ばれたのが甲斐優斗である。
リリーフサーバーとして、途中出場の切り札として、そしてスタメンとして――。ファイナル3日間、立場が変わるたびにコートの空気をガラリと変え、栄冠を手繰り寄せた“ゲームチェンジャー”。緊迫した局面での心理と、冷静な表情の裏側に隠れる素顔と本音に迫る。

優勝の瞬間・変わる役割と激闘を制した「チーム力」

――SVリーグ優勝おめでとうございます。西田選手のサービスエースで優勝が決まった瞬間、どのような感情がわいてきましたか?
最後、ベンチから見ていたのですが、サーブが西田選手に回ってきたので「これはサービスエースかフォルトかの二択だな」と思いました。というのも、あの場面、西田選手であればおそらくミスを恐れずにエースをねらって全力でサーブを打つと思ったからです。予想通りエースをしっかりとって、試合を終わらせる。やはりキャプテンである西田選手はすごいな、と思いました。西田選手はメンタルも強いですし、持っている選手だなと思いました。

――セレモニーの際にも冷静に見えました。実際はどのようなお気持ちでしたか?
いいところに目を向ければ、もっと喜んでもいいのでしょうが、やはり反省すべき点もありましたし、ファイナルで気づいた課題もありました。優勝したといううれしさと、自身のプレーに対する反省とで、葛藤というか、そういうのもありました。GAME3でいうと、チームから求められている攻撃面で自分の納得できるような数字が出せなかったことです。もっといろいろな局面で、瞬時に対応できたことがあるんじゃないかなというのが引っかかっていました。チームが勝ったので、そこはもちろんうれしく思っていたのですが。

――初戦はベンチからのスタートでした。その後、スタメンや途中出場と、いろいろな役割で出場しましたが、そのなかで気持ちの変化はありましたか?
何か変化があったかと聞かれたら、自分は特に変わった部分はないですね。レギュラーシーズンの終盤になるにつれて、チームの総合力が大事だというのはチーム全員が認識していました。自分の役割が試合ごとに違うのも、総じて”チーム力”ということになると思っています。そうやって最後は優勝まで行くことができたのだと思います。

――GAME2からは特にブルテオンのサーブが走り、それによって苦戦を強いられたとサントリーの選手が語っていました。それはチーム全体の戦略だったのでしょうか。
サーブは西田選手、ロペス選手を初めとして、強烈なサーブを打つ選手が多いので、チャンピオンシップでは徐々に会場にも慣れて、あの雰囲気にも慣れていったことが大きいと思います。戦略的にというよりは、そういった環境的なものと、初戦で敗れて「やらなきゃいけない」というメンタルが影響したのだと思います。そこで全員が、いつも通りの自身のベストなサーブを打てるようになったのかなと思います。

清水邦広選手の一言・ベンチでの準備と反撃のバックアタック

――GAME1、1セット終盤、リリーフサーバーとして出場しました。その際のねらいと自身のプレーについてはどう振り返りますか?
サーブについては全ての試合、良い感覚でサーブを打つことができました。どの場面も、常に自信を持って打ち込めました。4セット目は、1本ブレイクをして、そこから相手のマッチポイントで、最後は自分のミスで終わってしまったのですが、もうちょっと攻めてもよかったかなと思います。入れに行ったような感じでミスしてしまったので、そこは反省すべき点かなと思います。 迷いが出たというか、難しい場面ではありました。

3セット目の途中出場の際も、試合ではコートに行く前に、自分なりに試合を見ながら、今はどういう展開で自分が起用されたのかなとか考えていて。準備っていうところは常にしてはいるので、出たときにすぐ活躍できるようにいつも考えています。

――準備とは具体的にどんなことをするのですか?
サーブであれば、点数を見ながら、何割でサーブを打とうかなとか、コースも、コートに入る前に大体決めて、そこに打ち込むということをイメージしています。とにかく自信を持ってプレーできるように頭の中を整理しています。体は常に動かしつつ……。レギュラーシーズン中も、そういう交代は何度もあったので、自分の出番もわかります。試合の流れを見て、だいたいどこで交代するか予測はできますので、そのときのために準備をしています。長いシーズンだったからこそ、最後、そういった経験も生きてCHAMPIONSHIP Finalsの勝利につながったのだと思います。

――初戦、セットカウント1対3で敗れましたがそのときの心境は?
何かが悪くて敗れたという感覚はなかったです。とにかく今までやってきたことを信じて、継続するだけかなというのは思っていました。GAME2も、全員がスタートは硬さがあったと感じますが、そこからしっかり立て直して、フルセットで取り切ったのは、今まで練習してきたこと、試合で発揮してきたこと、経験を活かして全員が実践できました。最後まで自信を持って戦えたと思います。

――敗れてしまった日の試合後は皆さんで話をするのですか?また、甲斐選手はどう気持ちを整えましたか?
試合後は全くしないですね。遠征先で夕飯を食べる時なども、その日の試合の話はしないです。レギュラーシーズンのときから、勝っても負けてもその日は特に試合に触れずに、次の日の試合前にミーティングをするだけです。僕自身も特に何も……。というのも、まだCHAMPIONSHIP Finalsが終わったわけではないので、引きずる必要はないと思っていました。良かったところに目を向けて、次の試合に備えていました。

――GAME2の1セット目、10対23と大きくリードをされた場面で途中出場しましたが、そのときの心境は?
自分が出場する直前に、清水邦広選手から「真ん中が通っていないよ」という指摘があって、「お前はもっとパイプに入っていけ」と。そのパイプ攻撃をしっかり意識して準備しながら、もちろんフロントでの攻撃も決められるように。真ん中の攻撃が決まることで、両サイドの選手へのブロックの寄り方が甘くなるし、それでブロックが1枚になる機会も増えました。そこから自分たちの流れをつかむことができたのかなと思います。
※【パイプ】: 前衛の速攻(クイック)をおとりにし、後衛中央の選手がそのすぐ後ろから仕掛ける高速のバックアタックのこと。

――確かに甲斐選手のバックアタックで会場が盛り上がり、流れが傾いたように見えました。スタートで出場した第2セットの 22得点目は甲斐選手のサーブで相手を崩して西田選手のダイレクトスパイクで得点差を広げました。
サーブも自分の武器なので、貢献できてよかったです。サーブに関しては、どんなときも自信を持ってプレーできます。そうやって効果的なサーブを打ち続けられるように意識しています。

――自信を持って打てるようになるまでは、それ相応の努力が必要ですよね。
そうですね。確かに練習も積みますが、僕は経験も大切だと思っていて。点差とか、今、点数がどう動いているかで、どんなサーブを打つべきなのか変わってきますから、これまでさまざまな試合と状況を経験したことが、自信を持つためにはとても重要だと思っています。

――相手はリリーフレシーバーに藤中颯志選手を投入しました。守備を固められてサーブ戦略は変わりましたか?
僕の場合は全く変わらないですね。自分に求められているサーブは、まずは強いサーブを打つことなので、誰かをねらったり、逆に避けたりということはヘッドコーチからは求められていないと思います。とにかく強烈なサーブを相手コートに入れ続けることが自分の役割かなって思っています。リベロを避けようとも考えていないです。

――甲斐選手のパイプ攻撃で流れが変わったというお話を先ほどもしましたが、アントワーヌ・ブリザール選手のような高さのあるセッターの加入でパイプ攻撃を含む攻撃にはどんな変化がありましたか?
セットアップの位置がすごく高いので、相手のブロッカーは予測しづらいと思います。そして、高い位置からボールがくるので、両サイドのアタッカーまでのボールが到達するスピードもすごく速くなりました。攻撃のスピード感、攻撃のテンポリズムはとてもすごく速くなったのかなって思います。今までより1テンポ、2テンポくらい早く踏み込んで打つようになりました。

――GAME2のスパイク決定率59.1%(うちバックアタックは4打数4得点の100%)、サーブ効果率6.9%という数字を自身ではどう評価していますか?
ヘッドコーチからもバックアタックについては高く評価していただいているので、パイプには自信を持っていました。そしてフロントでも、僕のローテーション的にはムセルスキー選手が前にいるのではなく、セッターと対峙することが多かったので、そのポジションでの決定率はチーム全体としても重要だと思っていました。GAME2は自分の役割を果たせたと思っています。

――GAME3もスタートから出場。スパイク決定率は35.7%という成績でした。
攻撃に関しては納得がいっていないですね。だからこそサーブとディフェンスを頑張ろうと思っていました。ディグでつなげた展開もありましたし、サーブもコンスタントにいいサーブを打てたかなって思います。

――前日に甲斐選手の決定率が高かったことを受けて、相手のブロックなどに何か変化は感じました?
相手の対策は特に感じませんでしたが、僕自身が逆に意識し過ぎたかなという感じです。前日の結果を踏まえて相手が何か対策を立ててきているんじゃないかな、と……。でもチームメイトだったり、コーチ陣が「何も考えずに思い切り打て」と言ってくれたので、大事なところでの一点というのは、しっかり取り切れたかなと思います。

「全員が同じ方向を向く」から強い。誰が出ても揺るがない一体感


――ファイナル中、ベンチの雰囲気や、甲斐選手が出場していないときのアップゾーンの雰囲気は?
いつも通りですね。明るかったです(笑)。ブルテオンはゲーム展開によって変わることはありません。味方、敵関係なく素晴らしいプレーをすれば「今のプレー、ヤバかったな」とか賞賛の声があがりますし、レギュラーシーズンのゲームと同じような雰囲気でした。

――普段通りいられる強さの秘密は甲斐選手から見てどこにあると思いますか?
本当に全員が力のある選手なので、誰が出ても皆の向く方向は変わりませんし、選手交代もいい方向に働くことが多いです。全員が、試合を楽しみながら、なおかつ自信を持ってプレーしているところが強みだと思います。

――この試合でも交代で出場した富田選手への思いを聞かせてください。
僕から富田選手に交代するシーンについては、自分の現時点での実力を考えると、チームが勝つためには、そういった戦略が必要なのだと納得しているので特に何も感じません。ヘッドコーチがそうやって各々の役割を明確にしてくれるなかでプレーしてきたので、お互いに得意分野を生かせるよう努めましたし、だからこそCHAMPIONSHIP Finalsでも勝ち切ることができたと思っています。自分がもっとディフェンスを強化できれば、ずっと試合に出続けられると思っていますので、まだまだ上を目指せると今は考えています。
同じポジションなので普段は基本的に一緒に練習しているのですが、僕の方から何かを聞くことは少ないですね。ただ、富田選手を観察して「どうやってボールをコントロールしているのかな」と学んでいます。強力なサーブが来たときに、しっかりと自分たちのコートの中に上げるところは、富田選手はリーグでもトップクラスだと思います。ネットを超えないようにというのは富田選手もとても意識しているそうです。1本目(サーブレシーブ)の精度は大切なので、そこで力を発揮できるのは素晴らしいな、うらやましいなと思いながら見ています。

――富田選手は「甲斐選手がヘッドコーチに指摘されているときは、混乱しないように自分はあえて何も言わないようにしている」とおっしゃっていました。
ヘッドコーチも端的に伝えてくれるので、指導を受けて気負ったり、考え過ぎることはないんですが、ただ僕が「どうしよう!?」って焦っているときには富田選手が常に側にいて、声をかけてくれるので、とても助けてもらっています。

――ヘッドコーチは、甲斐選手は「サーブレシーブに課題があることも自分がいちばんよくわかっているので練習も熱心である」と会見で話していました。特にどのような練習で課題を克服してきたのでしょうか?
サーブレシーブはとにかく本数をこなすしかないと思っています。ボールに触る機会を増やしていますね。全体練習が始まる前に一人で練習したり、全体練習後にサーブを受けたり。サーブレシーブを課題としている以上、少しでも時間があれば練習したいですね。

――先ほど「ディフェンスで頑張った」と話していましたが、特にポジション6番(バックセンター)の位置にいる際に、体を目いっぱい使ってボールを取るシーンもありました。試合後、サントリーの選手がミックスゾーンで「(ブロック)ワンタッチを取られ、あの位置でとられたのが痛かった」と語っていました。
あのプレーは、相手のスパイカーに対しての対策を遂行したブロッカーがいてこそ、僕もレシーブできたと考えています。誰がコートに入っても、全員が戦略に対してしっかり同じ動きができるのがブルテオンの強さだと思います。戦略を頭に入れながらプレーしているので、ブロックするときもそうですし、ディフェンスをするときも、皆が戦略通り動くからこそ、自分も動きやすい。普段の実戦練習とミーティングのおかげです。

――GAME3では兄の甲斐孝太郎選手が打ったサーブを受けるシーンもありました。試合後にお兄様とは何かお話はされましたか?
全くですね。日頃から連絡はほとんどとらないので(笑)。兄がリリーフサーバーで出場したときは「たぶん僕をねらってくるだろうな」とは思っていました。兄の得意コースがストレート方向なので、そこに打つか、もしくはボールを切るようにして打つかの二択だなと思って。そう予測していたら、ちょうど僕のいる位置に打ってきました。

――以前、オリンピックのお話を聞いたときも、平然としていたことを思い出しました。物おじしない性格は子供のころからなのでしょうか。
小学生の頃からチームの軸としてプレーして、自分がチームの中心になることが多かったので、まあ、そういった立場的な影響もあるかもしれません。自分はずっとこのやり方を貫いているだけで、あとはとにかくバレーボールを楽しんでやっているというだけです。結局、試合では練習でやってきたことしか出せない。だからこそ、一生懸命練習したら、試合は楽しもうと思っています。

――大学時代も同様、これまでは中心選手として戦ってきましたが、こうして大阪ブルテオンでは交代で出る機会が多いですね。それでも心境は変わらないですか?
そうですね。今は自分の役割がはっきりはしているので、まずは与えられた役割を果たそうという思いです。もちろん結果を残すことが大事だと思うのですが、先ほども言ったように結果は後からついてくると思っています。
当然、もっと試合には出たいと思いますし、試合でしか得られないものというのもあるとたくさん思っています。練習だけしていて、試合に出られなかったら、練習してきたことが正解なのかどうかもわかりませんから。だから”試合”というのは、多く出られることに越したことはないと思っています。
ブルテオンでの立ち位置と違って、大学時代はチームを牽引する立場でしたが、自分は、勝てれば結局、どういう勝ち方をしてもいいと思うほうです。それが、たとえば自分がひとりで打って勝てるなら、それでもいいです。でも、バレーボールという競技はそれで勝ち切れることはほとんどないです。それが、バレーボールという競技の難しさであり、楽しさでもあると思います。ひとりでも欠けると、ほかの誰かに負担がかかる。だからこそ全員が同じ方向を向いていることが大事なんじゃないかなと思います。

「皆さんの応援があるから」直向きにバレーと向き合い、さらなる高みへ

――SVリーグ終了後には日本代表の活動も始まります。今季の目標は何ですか?
今シーズンはオリンピックの切符がかかっているアジア選手権が開催されます。その大会で、何が何でも出場権を取りきることを目標にしています。自分もチームに、そして出場権の獲得に貢献できるようにがんばります。今まで準備してきたことを生かせるよう、これから、また代表に向かう気持ちを作るところからスタートしたいと思います。

――大阪ブルテオンでの今後の目標を聞かせてください。
来シーズンは「前回チャンピオン」と謳われて、追われる立場になると思います。そんななかでもブルテオンらしさを貫きつつ、勝ち続けていけたらといいなと思います。

――ところで今シーズンはコンディション面などで辛い時期あったかと思います。甲斐選手の心の支えはなんでしたか?
好きなものを食べて、たくさん寝ることが、一番の”自分へのご褒美”だと思っています。お肉を食べているときに幸せを感じます。あとはお菓子とか、チョコ系とか、甘いものはすごく好きでけっこう食べます。トレーニングをがんばったあとには、そうやって好きなものを好きなだけ食べて解消していました。

――今回、SPIKE!編集部より甲斐選手へ、独自に設けた「SPIKE!賞」を贈らせていただきます。まずは、見事「SPIKE!賞」を受賞された率直な感想をお聞かせください。
SVリーグには実力があるアウトサイドヒッターが大勢いる中で、こういった賞をいただけるのは、すごくうれしく思います。まだまだ自分に足りないものもあるなかで、今シーズンは、試合で自分でもいい働きができたと思っていますので、そこを評価していただけたのかなと思います。

――「SPIKE!」は誰かを応援するきっかけになる媒体を目指しています。応援してくれている人に一言お願いいたします。
皆さんの応援があるからこそ、こうしてバレーボール界が盛り上がっていますし、選手一人ひとりのやる気に火がついたり、モチベーションにつながっていると思います。会場で応援してくださることでも、配信で応援してくださることでも、どこかでバレーボールを話題に出してくださることでも、そういった一つひとつが選手の後押しにつながっていると思います。引き続き応援をしていただけるとうれしいです。

Text by Shinobu Ichikawa

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