CHAMPIONSHIPへの切符はわずか6枚。その熾烈なボーダーラインの直下で、あるいは苦しい残留争いの中で、独自のアイデンティティを武器に戦い抜いたチームたちがいる。
豊富なタレントを擁しながらあと一歩に泣いた強豪、絶対的な武器でリーグを揺るがした個性派、そして「バックアタック1000本超え」という前代未聞の戦術に挑んだ新星まで――。
今回は、CHAMPIONSHIP進出こそ逃したものの、2025-26シーズンのSV.LEAGUE WOMENに確かな彩りと興奮をもたらしたデンソーエアリービーズ、Astemoリヴァーレ茨城、KUROBEアクアフェアリーズ、岡山シーガルズ、東レアローズ滋賀、アランマーレ山形の6チームの戦いぶりを徹底総括する。
【デンソーエアリービーズ】:終盤の5連勝で魅せた意地と、豊富な戦力を巡る葛藤と可能性
勢いに乗りきれなかった「22勝22敗」のサイクル
10月3勝3敗、11月5勝5敗、12月1勝3敗、1月3勝3敗……と、シーズンを通して五分五分のリズムから抜け出せなかった今季のデンソー。終盤に3連敗の窮地から意地の5連勝を飾り、最終盤までCHAMPIONSHIP進出争いに踏みとどまったものの、わずかな差で涙をのんだ。
強力な新戦力と、現役復帰のベテランが融合した陣容
3年目を迎えた大砲ロザマリア・モンチベレルを軸に、新加入のサブリーナ・デジェズス・マシャドや前季王者の大阪MVから移籍した蓑輪幸らが確実に得点源として機能。さらに、現役復帰を果たした中元南がリベロの川畑遥奈キャプテンとともに抜群の安定感でレシーブ陣を支えた。
ポテンシャルを結果へ結びつける、次章への宿題
石倉沙姫、野田祐希、柳千嘉といった有望な若手たちにコート経験を積ませることができたのは大きな収穫だ。この豊富なタレント陣が実力を存分に発揮しきるために、今季の戦いで得た経験は次なるステップへの確かなマイルストーンとなった。今季の結果を分析し戦術的深化を図り、来季の躍進に向けた確固たる基盤を築いていく。


【Astemoリヴァーレ茨城】:「継続の絆」で紡ぐ組織力。リーグトップクラスの個の力を結集したひたむきなバレー
大きな補強なきスタート、既存の絆を最大の武器に
高校バレー界の名将・相原昇新HC(=ヘッドコーチ)を迎え、渡邊彩の復帰はあるが、前年より攻撃力に課題を抱えて始まったシーズン。しかし、チームはあえて「メンバーが変わらないこと」を最大の強みに昇華させ、全員バレーでCHAMPIONSHIP 進出という目標へ挑んだ。そして、その熟成された組織力こそが、個々のポテンシャルを最大限に解き放つ鍵となったのである。
リーグを席巻した、2年連続の「強力スタッツ」
マッケンジー・メイを軸としたサーブは2年連続で効果率リーグトップを記録。さらに、センターラインではブリオンヌ・バトラーが2年連続のトップブロッカーに輝くなど、それぞれの個性がリーグトップクラスの数字を叩き出した。
大黒柱・長内美和子が魅せた「日本人得点王」のプライド
チームを力強く牽引したのは、キャプテンに復帰した10年目の大エース長内美和子だった。全セットに出場し、総得点は日本人選手の中で堂々の1位をマーク。若手時代と変わらない攻守への積極性とひたむきさで、チームの精神的支柱であり続けた。個々の力を連携の中で引き出し、エース長内がメンタルを支える。技術とメンタルの両面で磨きがかかった全員バレーこそが、Astemoリヴァーレ茨城のさらなる進化の可能性を示している。

【KUROBEアクアフェアリーズ】:開幕6連勝のロケットスタート。守備力の深化と、次なるステージへ挑む攻撃の強化
ネット際を制した「高さ」と、強固なディフェンス
179cmの大型セッター安田美南と、日本代表にも選出されたネット際の仕事人・山口真季のコンビが躍動。そこに長身の外国籍選手を配置したブロックシステムが機能し、リベロ浦山絢妃のディフェンスも安定。開幕から破竹の6連勝を飾り、一時はリーグ2位につける最高のロケットスタートを切った。
接戦を勝ちきれない、ラリー中の決定力不足
しかしシーズンが進むにつれ、ラリーに持ち込んでも最後の1本を決めきる決定力・爆発力不足がネックに。レーナ・シュティグロートとアイリス・ショールテンの海外勢に頼る展開で接戦を勝ち切れないケースも。年内には9位まで後退する苦しい時期を過ごした。
確かな成長を実感。来季の飛躍を確実にしたシーズン
一時は順位を落としたものの、終盤には7位まで持ち直すなど、初のCHAMPIONSHIP進出に向けて希望を捨てずに奮闘し続けた。このハイレベルな上位争いの経験は、アクアフェアリーズを確実に一回り大きくさせ、来季の飛躍へとつなげていく。


【岡山シーガルズ】:「ブロック強化」が切り開く新時代。復帰アタッカー陣との融合で目指すさらなる飛躍
日本人主体チームへの「新たな風」と、ブロックの改善
日本人選手のみで戦うシーズンが多い岡山だが、今季は184cmのベトナム代表ミドル、トラン・ティ・ビック・トゥイを補強。出場機会が限られながらもチームトップの69ブロックを叩き出し、チームの1セットあたりブロック決定本数を1.08本から1.48本へと劇的に引き上げた。
ミドルラインの攻撃・守備の課題
トラン・ティ・ビック・トゥイの奮闘があったものの、チーム全体のブロックランキングは2年連続でリーグ最下位。彼女に続く長瀬そらが35ブロックに留まるなど、組織としてのブロックシステムの構築にはまだ課題を残した。
スピードとバランスの収穫、そして大砲の完全復活へ
抜群の瞬発力を見せたリベロの城戸陽菜、攻守にバランスの良さが光ったエース中本柚朱の活躍は大きな光となった。ここに、ヒザの怪我から復帰した大砲・佐伯亜魅加が本格的に復調してくれば、課題である決定力不足の解消へ向けて、一気に視界が開けるだろう。


【東レアローズ滋賀】:名門を襲った連敗の試練。中道代行のもとで芽吹いた「若きアロー(矢)」たち
負の連鎖と、キャプテン負傷による15連敗の衝撃
かつてトップリーグを4度制した名門だが、近年は下位に低迷。浮上を狙った今シーズンも序盤から黒星が先行し、さらに深澤つぐみキャプテンが戦線離脱する不運も重なり、11月から翌年1月にかけて15連敗を喫し、最下位へと転落してしまう。
中道瞳HC代行へのバトンタッチと、チームの変革
クラブは越谷章HCの休養を発表し、かつての名セッター・中道瞳コーチがHC代行に就任。ここから名門のプライドをかけた立て直しが始まった。ジュリエット・ロホイスが攻守にわたる八面六臂の活躍でチームを鼓舞し、コートに新たな活気をもたらした。
13位フィニッシュの中に輝いた、新星たちのポテンシャル
苦しいシーズン最終順位(13位)となったが、その中で大きな輝きを放ったのが若手たちの台頭だ。新人賞を獲得したセッター花岡千聡が見せた懸命のトスワークや、大学4年のアウトサイドヒッター折立湖雪の攻守における献身的なプレーは、どん底を味わった東レ滋賀の未来を明るく照らす最高の収穫となった。

【アランマーレ山形】:秋田移転を見据えたシーズン。「バックアタック1000本超え」という立体バレーの開拓
パワーと高さの不利を覆す、前代未聞の「立体化」
2026-27シーズンからの秋田への活動拠点移転が決定した中で迎えた特別なシーズン。決定力や高さ、パワーで劣るハンデを克服するため、A山形が選択したのは「攻撃の立体化」という極端かつ魅力的な戦術だった。
女子バレーの常識を覆す、驚異のスタッツ
基本的に、女子カテゴリーではバックアタックを打つ選手は2人、多くても3人の選手に集中するケースが多いが、山形は若泉佳穂を中心に、なんと4人もの選手が積極的にバックアタックを展開。その結果、全14チーム中、唯一「バックアタック総打数1000本突破」という驚異的なオフェンススタイルを確立した。
積み上げた「全員攻撃バレー」の礎を、新天地・秋田へ
このアグレッシブな挑戦をもってしても、リーグの厚い壁に阻まれて苦しい戦いが続き、シーズン途中には北原勉HCがチームを離れ、尾﨑侯コーチが代行を務める激動のシーズンとなった。しかし、この地道に築き上げた「全員攻撃バレー」という礎は、新天地・秋田での大躍進に向けた大きな布石となる。

今シーズンのSVL女子レギュラーシーズンは、CHAMPIONSHIP進出を果たした上位陣だけでなく、9位以下のチームたちが魅せた凄まじい「意地」と「戦術の模索」によって、リーグ全体のクオリティが底上げされたシーズンとなった。
豊富な戦力をベースに、CHAMPIONSHIP進出まであと一歩と迫ったデンソーエアリービーズ、継続性を武器にリーグトップのスタッツを維持したAstemo、開幕6連勝で台風の目となったKUROBE、海外選手の補強でブロック改善の兆しを見せた岡山、HC交代の苦難から新人賞を輩出した東レ滋賀、そしてバックアタック1000本超えの超立体バレーを披露したA山形。
CHAMPIONSHIPという舞台には届かなかったものの、彼女たちが毎試合コートに残した泥臭いディフェンスや新たな戦術への挑戦は、SVリーグの底知れぬ奥深さを物語っている。この1年で得たそれぞれの課題と収穫を胸に、オフシーズンを経て彼女たちがどのように牙を磨き直してくるのか。群雄割拠の女子SVリーグ、来シーズンの下克上ストーリーの主役は、すでに生まれようとしている。
