SV.LEAGUE WOMEN CHAMPIONSHIP。頂点を極めたSAGA久光スプリングスと大阪マーヴェラスの激闘の裏で、CHAMPIONSHIPの舞台に名を連ねた強豪たちもまた、独自の進化を遂げてコート上で眩い輝きを放った。
レギュラーシーズン1位から涙を呑んだ名門、最下位から大躍進を遂げた新星、そして巧みな戦術と組織力で勝負を挑んだ曲者たち――。最高峰の舞台で火花を散らしたNECレッドロケッツ川崎、PFUブルーキャッツ石川かほく、ヴィクトリーナ姫路、クインシーズ刈谷、群馬グリーンウイングス、埼玉上尾メディックスの6チームの激闘の足跡を掘り下げる。
【NECレッドロケッツ川崎】:リーグ最高水準の得点力を携えRS王者へ。アジアの頂点で証明したプライド
スタッツが証明する、リーグトップの「矛」のクオリティ
新指揮官に中谷宏大HC(=ヘッドコーチ)を迎え、前シーズンのCHAMPIONSHIP Finals敗退の悔しさを胸に挑んだ今シーズン。シルビア・チネロ・ヌワカロール、佐藤淑乃、ジョバンナ・ミラナ・デイの強力な「3本の矢」がバランスよく得点を量産すれば、ミドルの甲萌香、山田二千華も高い精度で追随。チームアタック決定率でリーグトップに輝き、粘り強くレギュラーシーズン(RS)を1位で通過した。
好敵・大阪MVの前に敗退、残った国内の宿題
CHAMPIONSHIP SemiFinalsの相手は、前年のCHAMPIONSHIP Finalsで敗れた大阪MV。12月の皇后杯決勝でも「第5セット14-11」というマッチポイントから大逆転負けを喫した因縁の相手に対し、大阪MVの牙城を崩せず2戦連続のストレート負けを喫し、悔しさの残る幕切れとなった。
アジアチャンピオンズリーグでの歓喜
しかし、彼女たちのシーズンはここでは終わらなかった。直後に挑んだアジアチャンピオンズリーグ女子バンコク2026では、国内の悔しさを爆発させるかのような快進撃で見事優勝。アジアの頂点という最高の結果で、RS王者の誇りと底力を証明してみせた。

【PFUブルーキャッツ石川かほく】:大躍進のRS3位!旋風を巻き起こしたチームの「一体感」。
新司令塔・松井珠己がもたらした化学反応
大きなスパイカー補強は横田真未と西川有喜に留まり、外国籍選手も2年目のタットダオ・ヌクジャンのみ。しかし、海外プロリーグを渡り歩いてきたセッター松井珠己の加入が、チームに化学反応を起こした。元来の明るさと勢いに松井の卓越したトスワークが加わると、バルデス メリーサらの決定力が爆発。シーズンが進むにつれて勝率はうなぎ登りとなった。
「守備」の進化で前年10位から大躍進
さらに、石川県かほく市特有の豊かなアップダウンを活かした夏場の徹底的なトレーニングが、タフなラリーを制する勝負強さへと直結。上位陣を次々と撃破して自信を深めたチームは、前年の10位からRS 3位へと垂直跳びの大躍進を果たした。
王者を追い詰めたセミファイナルの死闘
CHAMPIONSHIP SemiFinalsではアウェーでSAGA久光をあと一歩のところまで追い詰める激闘を展開。惜しくもCHAMPIONSHIP Finals進出は逃したものの、今季のSVリーグを最も熱く盛り上げたその雄姿は、多くのバレーファンの記憶に深く刻まれた。


【ヴィクトリーナ姫路】:満身創痍のスタートから5位へ浮上。攻守のバランスを最適化する戦略的な戦術展開
主力離脱の窮地を救った、新戦力たちの完璧なフィット
井上愛里沙らの引退、秋本美空のドイツへのレンタル移籍、チャッチュオン・モクシーの故障という、開幕前に直面したアウトサイドヒッター陣の緊急事態。しかし、移籍加入の野中瑠衣とカミーラ・ミンガルディが瞬く間にチームへフィットし、この危機を救った。さらに新加入のリベロ福留慧美がさすがの安定感を見せ、渡邉かやも要所のディフェンスでチームを支えた。
リーグ2位を誇る、強力なブロックとサーブの生命線
ミラ・トドロヴァと伊藤麻緒を軸としたブロックは1セットあたり決定本数リーグ2位、野中らが牽引したサーブ効果率でも同2位と、強固なディフェンスシステムを確立。オポジットにはサウスポーの田中咲希と、高さのある宮部藍梨という2人の実力者を巧みに使い分ける独自のコンビネーションを採用した。
前年を上回る5位フィニッシュという価値
上位陣に対しては苦しい戦いも強いられたものの、崩れることなく確実に白星を積み上げ、前年の6位から順位を1つ上げてゴール。主力離脱という緊急事態で始まった今シーズンを、戦術と組織力で乗り越えたこと。それこそが、変革期の姫路がこの一年で進めた、確かな一歩だった。


【クインシーズ刈谷】:新生クインシーズの覚醒。リーグ1位の「壁」へ進化を遂げたディフェンス力
波乱の幕開けから、個の力が融合した中盤戦
「トヨタ車体クインシーズ 」からチーム名を変更して2年目。酒井新悟HCを迎え、強力な外国籍選手を補強して臨んだものの、開幕戦での群馬との敗戦やKUROBEへの連敗など、滑り出しは順風満帆とは言えなかった。しかし、キャプテン鴫原ひなたが攻守の軸としてチームを支えると、ソフィア・クズネツォワやかつての得点王ダニエル・カッティーノらが徐々に本領を発揮し、上位陣を脅かす存在へと変貌した。
前年10位からトップへ。劇的進化を遂げたブロックシステム
横田紗椰香やマリー・シェルツェルの活躍により、前シーズン10位に沈んでいた1セットあたりのブロック決定本数がリーグ1位へとジャンプアップ。強固な「壁」は、単なる防御に留まらず、チーム全体に「揺るぎない自信」をもたらし、さらなる高みを目指す土壌を作った。
タイのレジェンドがもたらした「見えない進化」
コーチ兼任として関わるタイの伝説的セッター、ヌットサラ・トムコムの優れたコミュニケーション力が、チームの戦術理解とメンタル面を大きく引き上げ、激戦のRSを戦い抜く大きな原動力となった。この精神的・戦術的な向上が、先述したブロックシステムをより高精度で機能させ、「クインシーズの進化」をより確かなものにした。


【群馬グリーンウイングス】:連敗からの脱却。創部初のCS進出を果たした、攻撃力の覚醒
あくなき「1勝」への執念。初戦で悲願の勝利
トップカテゴリー初参戦となった前年は開幕35連敗、最下位という苦渋を味わった群馬。しかし坂本将康新HCのもとで大胆な補強を敢行すると、アウェーの開幕戦でいきなり快勝。前年の呪縛を初戦で解き放ち、その強さが本物であることを証明した。
総得点王と決定率上位を擁する、驚異的なサイド攻撃力
チームの最大の特徴は、粗削りながらも「3本目を打ち切る」圧倒的な決定力。総得点1位のオリビア・ロジャンスキ、アタック決定率3位のナシア・ディミトロヴァ、そして190cmのジャン・ティ・タン・トゥイーら強力な大砲へトスを供給し、髙相みな実や藤井寧々ら国内勢が要所でアクセントを加えた。
3月29日、歴史を塗り替えた歓喜の瞬間
アランマーレ山形に勝利し、創部史上初となるCS進出が決定。最下位から1年でCSの舞台へと駆け上がったシンデレラストーリーに、メンバーや関係者は歓喜の涙を爆発させた。

【埼玉上尾メディックス】:全員で戦う「総力戦スタイル」と組織的な攻撃力が光るチーム
連戦を見据えた独自の方針
タフなRSの全44試合、そしてベテランのコンディションを考慮し、連戦でメンバーを巧みに使い分ける「ターンオーバー制」を今季も継続。規定セット数に達しない選手が多いスタッツこそ、チーム全員で戦い抜く埼玉上尾の組織力の証だ。
前衛重視の明確なオフェンススタイル
攻撃を牽引したのは新加入のオクム大庭冬美ハウィとイザベラ・マリア・ラパズ。チームのアタック打数トップ2の2人だが、バックアタックの割合はわずか9%。チーム全体でもバックアタック本数はリーグ下から2番目と、黒後愛も含めて徹底した「前衛からの攻撃重視」という明確な戦術カラーを打ち出した。
レジェンド内瀬戸真実が繋いだチームの文化
守備面では岩澤実育とともに、3シーズンぶりに復帰したベテラン内瀬戸真実がキャプテンとして躍動。リーダーシップを発揮できるタレントが集まる中で、チームの伝統とその献身性を次世代へ継承する、特別な精神的支柱として大きな役割を果たした。この揺るぎない存在があったからこそ、タフな連戦を全員で戦い抜く「総力戦スタイル」が真に機能し、チーム全体の一体感をより強固なものにしたと言えるのではないか。

2025-26 大同生命SV.LEAGUE WOMEN CHAMPIONSHIPを彩ったこれら6チームの戦いは、リーグ全体の勢力図がかつてないほど激しく、そしてハイレベルにパワーバランスを保っていることを証明した。
粘り強く戦い抜きリーグを支配したNEC川崎、驚異の一体感でRS3位へジャンプアップしたPFU、主力の入れ替えを戦術でカバーした姫路、ブロック1位の盾を築いた刈谷、最下位から快挙を成し遂げた群馬、そして独自のワークシェアと前衛攻撃を貫いた埼玉上尾。
CHAMPIONSHIPの舞台で彼らが繰り広げた一進一退の攻防と、それぞれのクラブが証明した「進化」は、SVリーグの未来がさら熱を帯びる確かな予感をファンに与えてくれた。この経験を経て、各チームがどのように牙を研ぎ、次なるシーズンで女王の座を脅かすのか。群雄割拠の戦いは、すでに次なる幕開けを待っている。
