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「いてくれるだけで本当に助けられる」共に高め合うNEC川崎の守護神、大工園彩夏と児玉奈津美
「いてくれるだけで本当に助けられる」共に高め合うNEC川崎の守護神、大工園彩夏と児玉奈津美
インタビュー

「いてくれるだけで本当に助けられる」共に高め合うNEC川崎の守護神、大工園彩夏と児玉奈津美

2026.07.21
redrockets

 入団4年目の大工園彩夏と2年目の児玉奈津美。同じリベロというポジションでありながらタイプは全く異なる2人だが、そこには切磋琢磨する仲でありながら、絶大な信頼とリスペクトがある。共にスパイカー出身だからこそ抱えたリベロ転向への葛藤や、昨シーズンの悔しい経験を経て、さらに強く逞しくなった2人の守護神。互いに高め合い、支え合いながらチームを勝利へと導く2人の、バレーボールにかける熱い想いに迫る。(取材日/6月18日)

異なるタイプのリベロ。互いに称え合う身体能力と球際の強さ

 2歳違いの守護神、同じ「リベロ」というポジションでもタイプは全く違う。
 入団4年目の大工園彩夏と、2年目の児玉奈津美。高校、大学も異なり、本格的に接するようになったのはNECレッドロケッツ川崎のチームメイトになってから、という2人。児玉に言わせれば大工園は「身体能力が抜群で、周りを動かす統率力も持ち合わせる選手」で、大工園は児玉を「球際の強さがずば抜けていて、1本のレシーブで会場を沸かせる力がある選手」と称賛する。
 ポジションが同じである以上、コートに立つための競争は不可欠だ。だが、2人の間にはただのライバルという関係性だけでなく、絶大な信頼、そしてリスペクトがある、と大工園は言う。
「いつも一緒に練習しているので、お互いの良さや、もっと頑張らないといけないところ、改善すべきものや伸ばしていきたいところを分かり合っているので、自分が試合に出たいと思うのはもちろんですけど、私が出た時だけじゃなくナツ(児玉)が出た時もこのチームのリベロとしてチームを任せてもらえている、という自信があるんです」

理想と限界の間で。スパイカーから本格的にリベロへと転向した大学時代

 鹿児島県出身の大工園がバレーボールを始めたのは小学3年の頃。「特にこうなりたい、と憧れたわけではなかった」というスタートではあったが、当時からバレーボールのセンスに長け、中学は鹿児島から越境し、大阪の金蘭会中学校へ。同学年には後にNEC川崎でチームメイトになる中川つかさがいて、日本一にも輝いた経験を持つ。
 高校からは鹿児島に戻り、鹿児島南高校へ。当時はスパイカーとしてインターハイ、春高にも出場し、アンダーカテゴリー日本代表にも選出された。レシーブ力を買われ、ジュニア代表として高校3年時にはアジア選手権にも出場。リベロとしてプレーしたのは、この時が初めてで、高校卒業後に進学した鹿屋体育大学で、本格的にリベロへ転向。2年時には全日本インカレを制した。
 一方の児玉も、バレーボールとの出会いは早いがリベロへの転向は決して早くない。小学校入学前から母の影響と、先にバレーボールを始めていた姉の練習に付いて行く日常の中で、自然とバレーボールに触れてきた。国際試合のたびにテレビでバレーボールの試合を見て、憧れは世界のリベロとして名を馳せ、北京、ロンドンと二度の五輪にも出場した佐野優子さん。小柄だが、どんなボールも落とさない。絶対的な安定感と、どんな強打も拾う守備力に「私もこんな選手になりたい」と憧れた。
 高校は地元大阪の強豪、金蘭会高校へ進学したが、大工園のように中学から入ったわけではなく公立の中学校を経て高校から入学した。エリート揃いの中でスパイカーとしてプレーしたが、内心では「リベロに転向したい」と思い続けてきた。卒業後に上京し、関東1部の順天堂大学への入学を機にポジション変更を望んでいたが、リベロには先輩の選手が定着していた。守備型のスパイカーとしてプレーしたが、リベロへの憧れと「SVでプレーするためにはスパイカーとしては限界がある」と4年時に念願のリベロ転向を果たした。

チームの精神的支柱へ。ミスの後も信頼を繋ぎ、チームを立て直す強さ

 “守備専門”と表されることが多いリベロのポジション。確かに、サーブレシーブやディグ(スパイクなどの強いボールをレシーブすること)など、守備の要になる存在であることに変わりはないが、単に守備力が高いからというだけでこなせるほど簡単なポジションではない。ましてや長年、スパイカーとしてプレーしてきた2人にとって、リベロ転向後はできないことばかりで、突きつけられるのは課題ばかり。児玉が冗談半分で「前衛の選手が攻撃に入れない状況で、思わず自分がスパイクを打ちに行こうとしたこともあった」と回顧するのもあながち大げさではなく、レシーブしてからスパイク動作に入っていたスパイカーとしての経験が、リベロとしてネックになることもあった。
 何より困惑したのは、一度の失敗を簡単に払拭できないこと。スパイカーならば、レシーブの調子が悪くてもスパイクで挽回できるが、スパイクはもちろん、サーブやブロックで直接得点を取ることができないリベロにその機会は限られている。
 加点式ではなく、減点式のポジションだからこそ抱える葛藤を、大工園が明かす。
「試合の中でどうやって調子を上げていくか。それがすごく難しくて。スパイカーならばたとえレシーブを弾いたとしても『もう1回(トスを)私に上げて!』と言えたんですけど、リベロは1本弾いた後に『私のところにもう1回持ってきて』とは言えないし、実際ボールが来ないこともたくさんある。1本のミスを引きずったまま、モヤモヤしたまま時間が過ぎていくことも多くて、そこからいかに切り替えるかがすごく難しかったです」

「リベロとしてのお手本」。数字に表れない貢献度を理解し、学び合う2人

 だからこそ、と言うべきか。互いが背負うプレッシャーや、もどかしさを誰よりわかり合って、分かち合えるのが同じリベロの2人でもある。1つ1つのプレーを紐解いて、何ができていなかったからこうなったのかを分析するのはもちろんだが、数字に表れない貢献度を誰より理解するのもリベロ同士。児玉は経験の浅い自身と比較して大工園がコートで見せる姿を「リベロとしてのお手本」と絶賛する。
「私はどうしても自分のプレーに目が向いてしまうので、セッターが(トスを)上げやすいパスをいかに持って行くか。攻撃しやすい質のレシーブがどれだけできるかで精いっぱいなんですけど、サヤカさんは自分が拾うのはもちろんですけど、周りを動かす声をかけて、全体がどう動けばいいか。それこそ360度に目があるんじゃないかというぐらい、いろんなところが見えている。練習でも試合でも、すごいな、と思わされることばっかりなので、その都度『今、何でここにいたんですか?』と聞くし、とにかくひたすらサヤカさんを見て、いいところを真似する。私のプレーに対しても『今のどうでしたか?』と素直に聞けるので、いてくれるだけで本当に助けられる存在です」
 互いが互いの凄さを称え、目を輝かせる。充実の日々を過ごす現れでもあるが、ここまでを振り返れば、苦い記憶もある。昨シーズンはレギュラーシーズンを首位で終え、ホームでチャンピオンシップを迎えたが、セミファイナルで大阪マーヴェラスに敗れた。「あれだけ長い時間プレーしたのはほぼ初めてだった」という児玉がリベロに抜擢され、再三のファインプレーで満員の観客を何度も沸かせたが、勝ち方を知る経験豊富な選手が揃う大阪MVの前に、最後は成す術なく敗れた。
 試合後、2人のリベロは「今やれることはできた」と互いを称え合いながらも、大工園は自らがルーキーの頃に痛感した勝利への覚悟を持てていなかった自分に、後悔を残す。
「今振り返れば、本気度が足りなかった。つかさを見てもそうだし、私が入ったばかりの時に(古賀)紗理那さんが見せて来た姿勢、目標を叶えるために本気でやる、その“本気”を見せてくれる選手がチームにいてくれて、厳しく、勝つために妥協しない。それが当たり前じゃなく、みんなが同じ熱量で、むしろ超えるぐらいの力を出さないと勝つチームにはなれなかった。今振り返ると、負けたことよりも、そういう大事なことができなかったのがすごく悔しいです」
 SVリーグという高いレベルでぶつかり合う場所だからこそ、勝利の喜びが味わえる一方で負けた悔しさも大きくのしかかる。だが、次々そびえ立つ分厚くて高い壁を乗り越えていくことこそが成長の道のりで、その姿を見て多くの人たちが胸を熱くする。
 特に強烈な一打を拾い、得点につなげるリベロのレシーブはバレーボールの醍醐味でもあり、会場を大いに沸かせるだけでなく、その声援が何度も何度も、選手たちの背中を押す。
 大工園、児玉、2人の学生時代はコロナ禍で、高校、大学での全国大会を無観客で戦った経験もある。多くの観客がいる中ならば試合の流れを変えるような1本のレシーブも、声や手拍子で盛り立てる観客がいなければ、ただのファインプレーで終わってしまう。そんな経験があるからこそ、シーズン中ほぼすべてのホームゲームを赤で埋め尽くしたNEC川崎のサポーター、“クルー”の前で戦う試合は格別だ。

クルーと共に戦う格別な試合。バレーボールの魅力を伝え、憧れられる選手へ

 見てくれる人たちに、もっとバレーボールの魅力、楽しさを伝えるために何ができるか。自らのプレーで直接得点することができない、リベロというポジションだからこそ見せられる、バレーボールの醍醐味もある。かつて「佐野さんみたいになりたい」と憧れたように、いつか自分も「児玉さんのようになりたい、と思われるような選手になりたい」と児玉は目を輝かせた。
「試合は練習してきたものを発揮する場所。その過程が一番苦しいけれど、その時間を一緒に乗り越えてきた仲間と、クルーの皆さんと同じ気持ち、姿勢で戦い続けることが私たちにできることですべきこと。リベロはチームを支えるポジションなので、私ももっと成長できるようにサヤカさんからたくさんのことを学びながら、高め合って、支え合っていきたいです」
 大工園も同じだ。
「すごいプレーだけじゃなく、コートの中での些細な会話が点数を取るきっかけになることもあるので、その会話がどんな展開を生み出すのか。理想、想像を膨らませながら楽しんでほしい。ナツと私は同じポジションで、試合ではどちらかしか出られないですけど、自分を信じて、ナツを信じて。助け合いながら戦い続けたいです」
 派手なレシーブだけじゃなく、何気ない1本、ひと言でチームを支える力になる。さらに強く、逞しくなった2人の守護神の姿がバレーボールの面白さをさらに広げてくれるはずだ。

Text by Yuko Tanaka
Photograph by Kohei Komatsu

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